人は悩んでいても仕方のないことに悩みたがる。人生だとか、恋だとか、どうなるのかわからないことに悩みたがる。算数のようなわかりきった問題よりも、国語のようなわかり辛い問題に、子供の頃から悩みたがるのだ。
しかし、それを無駄と切って捨てることもない。決して無駄ではない。それ以上考えるのは無駄かもしれないが、そこまでは考える必要があったと割り切るべきだ。そうやって悩むべきなのだ。特に子供の間は。
果たして、子供でなくなった俺は、どのように迷うべきなのか。
「君には妙な時期があるよね。普段なら断じて迷わず切り捨てるのに、堂々巡りをする時期がある」
「別に、普段だって迷わないわけではないんだよ。ただ、悩む時間が必ずしも結果に結びつくわけじゃないというだけで、それを知っているだけだ。正解にたどり着けるなら、いくらでも考えるさ。選択の機会があって、悩んでいるなら指運で選んでも変わらない。結果だって、後悔するか後悔しないかの二つに一つだ。じゃんけんと同じだよ」
「勝つか負けるかの二択だから勝率は五割、みたいな話かい?」
「そう。引き分けは再試合、敵と俺の一騎打ち。人生なんて、そんなもんだろう」
「いったい何が敵なんだよ」
話を戻して。
「そう、そんなふうに結論付けるじゃないか。だからつまり、今の君は。今の君じゃなくて、らしくもなく弱っている君はいったいなんなのだ」
「なんなのだって、誰なんだよお前は。文語体みたいな喋り方をするな」
誰なのかは、ほかならぬ俺が知っている。
お前は僕だ。
俺はさらに続ける。嫌々ながら、経過報告をする。
「弱々しい時期は減った。今回は3日ほどで元に戻ったぜ。地獄のような3日間だったし、3日間だけに限れば悪化している気もするし、数日経った今も後遺症はそれなりにあるけれどな。それでも3日間で概ね直ったんだ。これは成長と言ってもいいんじゃないか?」
「凹んだものが元に戻っただけだ。調子に乗るな。ヤンキーが更生したからって、褒められるべきことじゃないんだよ」
「いや、それは褒められるべきことだろう。ヤンキーが更生すれば、それは成長だ」
凹んだものが元に戻っただけなんだがな。
「そうだね」
論戦を無駄と悟った僕は、素直に諦めた。心の底では、まったく気にしていないのがよくわかる。
他ならぬ僕のことだ。
そして弱々しい俺は、俺自身なのだ。らしくもなく弱っているのは常に俺だ。
ならば、僕の問いとは「君はなんだ」に違いない。自分に都合の悪いものを押し付けているくせに、俺のことが邪魔らしい。弱々しい自分のことが嫌いで、なのに救われたがっているらしい。
「いい加減に大人にならなきゃいけないよ。いつまでも子供みたいなことをやっていたらいけない」
どちらかというと、俺に聞かせるよりも自分に言い聞かせているようだった。
結局のところ、わかっているのだ。どうしようもなく、自分は子供だと。
ごっこ遊びは終わりにしないといけない。いつかは。
「強々しくならないとなあ」
「そんな言葉はない」
頭の悪い台詞を、いったい誰が言ったのだろうか。
悩むだけ無駄である。
あとがき
よくここまで読みましたね。いや、そんな皮肉を言わせてください。読んでもらって、素直にありがとうと言いたくないような内容なのです。
調子が悪くなると、こういった文章を書きます。黒歴史になって、後々また落ち込みます。ブラックヒストリースパイラルです。必殺技かよ。
それでも、「ごっこ遊び」は極端に減ったんですよ。
この辺については、またいずれ。
やっぱり、ありがとうございました。