一万円札の顔にもなっている福沢諭吉先生の名著『学問のすゝめ』。
タイトルを知っている人は多くても、中身を読んだことのある人は少ないのではないでしょうか。
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」
これは福沢諭吉の名前と『学問のすゝめ』に並んで有名なフレーズです。
これを聞いて、
「つまり福沢諭吉のような凄い文学者が言っている。人は皆平等なんだ!」
と言う人がいます。
違うよ?
そもそも、この「天は」に始まる文章は、
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずといへり」
「いへり」は「言われている」ですから、この文章、伝聞調です。
福沢諭吉の言葉でもなんでもないです。
どこで言われているかというと、アメリカ独立宣言です。彼が和訳し、引用しました。
さて、本文はこう続きます。
「されども今廣く此人間世界を見渡すにかしこき人ありおろかなる人あり貧しきもあり冨めるもあり貴人もあり下人もありて其有様雲と坭との相違あるに似たるは何ぞや」
スーパー意訳がこちら。
「けれど、今世界には賢い人や愚かな人、貧しい人や富める人がいる。この違いはなんだろうか」
福沢諭吉は人の平等を否定して、なぜ格差が生まれるのかを考えたのです。
意訳ですが、ここからさらに続けて、
「その差がつまり、学問を修めているかどうかなんだよ」
と言った福沢諭吉。ゆえに『学問のすゝめ』。
簡単な内容なのですが、福沢諭吉の政治思想が含まれているので、少し引っかかる部分もあるかもしれません。
しかし内容は、今でも十分通用することが書かれています。
まさに勉強になるので、もしも読んでいない人は現代語訳版でも構いませんから読んでみてください。
『学問のすゝめ』に限らず、名著は名著と言われるだけの所以があるので、是非目を通してみましょう。
さて、別に僕は『学問のすゝめ』をオススメしたいわけではないのです。
どちらかと言えばしたいですが、今回の話の主題はそこじゃないんです。
世間に流れている情報は、たとえ常識的なものであっても、必ずしも真実だとは限らないということ。
今回の『学問のすゝめ』のように、言ったことや書いたことが切り取られて、意図しない方向で使われているのかもしれません。
ましてこの情報社会、昨今のマスコミのように悪意を持って印象操作しようとする人たちもいます。特にSNSには注意しましょう。
何事もそうですが、1つの意見を聞いたら、まずは自分で調べ、別の視点の意見を聞くのが重要ではないでしょうか。
これこそ、学問。