いわゆる「ゆっくり」の声やVOICEROIDなど、音声合成ソフトで作られた声は、今や世間でも当たり前に聞こえます。今回は、それらを使った動画編集をしたい人向けのお話です。
音声合成ソフトとは?
一応前提の話ですが、本筋ではないうえに少しややこしいので、飛ばしていただいて結構です。
音声合成ソフトとは、テキストを入力すると、言葉を読み上げるソフトのことです。ジャンルとして世間に知られているVOCALOIDなども、そのひとつ。最近は、ソフトウェアにキャラクターの名前を付けて、販売されているのが特徴ですね。
インターネット上では「ゆっくり」として知られる音声合成ソフトは、AquesTalkといいます。これを他のソフトウェア上でも使えるように、ライセンスなどが組まれているのですが、そのあたりはややこしいので、今回は触れません。
音声合成ソフト全体やキャラクターそのものを指して「VOICEROID」と呼ぶ方もいますが、実は誤りです。
VOICEROIDとは、本来、株式会社エーアイの音声合成エンジン「AITalk」を採用したソフトウェアを元に、株式会社AHSが個人向けにパッケージングしている製品群を指します。たとえば、東北ずん子や結月ゆかりなど。これらのキャラクターの権利自体はまた別のところにあったり。
最近では、AI技術を使っているCeVIO(さとうささらなど)や、無料で使えるVOICEVOX(ずんだもんなど)が有名どころでしょうか。
さておき、これらの音声合成ソフトを使った動画編集で、どの編集ソフトを使うべきなのか? ご自分に合ったものを見つけてください。
動画編集ソフト一覧
先に一度、結論だけ述べます。
音声合成ソフトを使った動画編集をするなら、まずはYMM4から。YMM4でできる編集に物足りなくなったら、Aviutlを導入しましょう。
音声合成ソフトにこだわらないのであれば、FilmoraやDaVinci Resolveを触ってみて、普通の編集ソフトに慣れてみましょう。そこから、もしも仕事にしたいと思うことがあれば、Adobe Premiere Proを購入するのがおすすめです。
①Aviutl
古くからあるフリーの動画編集ソフトウェアです。プラグインで機能を追加して使います。インターネット上に利用者が多いので、わからないことを調べやすかったり、有用なサードパーティ製プラグインがたくさんあったりと、使いこなせれば便利な編集ソフトです。
音声合成ソフトに関連した有志のプラグインを入れられるので、もっとも効率的に動画を編集できるソフトウェアです。私も、VOICEROIDを使った動画は、Aviutlで制作しています。
Aviutlで制作した、ふるさと納税でVOICEROIDの京町セイカを手に入れる手順の解説動画。
しかし、デメリットも多くあるので、それらを割り切らなければいけません。
まず、導入に手間がかかります。今から初めて動画編集をする人には、導入で挫折しない心が必要です。実のところ、これだけで放り投げてしまう人も結構います。
ソフトウェアそのものが古いので、今後の対応がどうなるのかわかりません。2013年に更新して以降、2019年まで更新されていませんでした。果たして、いつまで使えるのでしょう。プラグインの関係で32bitソフトですし……。
UI*1が他の編集ソフトと大きく違います。今後、音声合成ソフトを使った編集以外をするかもしれないのなら、普通の編集ソフトに慣れておいた方が得策です。
高度な編集にもひと手間いります。他の編集ソフトであればワンボタンで済むことにも、プラグインを入れて数値を弄って……と時間がかかります。慣れてしまえば、これらを省略することもできるのですが、そこまで行き着くのに時間がかかります。
大きな容量の素材を使えません。読み込むと、編集中の動画がまともに動かなかったり、クラッシュしたりと、不具合が頻発します。
総合的に見ると、今から初めて動画編集する方にはおすすめできません。
まずは導入と操作に難易度の低い編集ソフトから始めて、もし音声合成ソフトに特化させたいのであれば、導入を検討しましょう。
公式サイトはこちら。
参考になる解説サイトはこちら。
②ゆっくりMovieMaker4
YMM4とも呼ばれる編集ソフトです。使い勝手はAviutlに似ていますが、導入や操作は比較的簡単で、簡単な編集であればほぼ単体で完結します。
ゆっくりゲーム実況プレイ動画に特化した作りで、ソフトウェア上でAquesTalkが使えます。また、一部の外部アプリケーションと連携することもできます。
なんとなく音声合成ソフトの動画を始めたいと思った人は、無料で使えるAquesTalkやVOICEVOXと併用すると良いでしょう。ただし、営利目的での利用など、各種規約については注意しなければなりません。
もし音声合成ソフトを使った編集だけでよいのなら、YMM4から始めてみましょう。
公式サイトはこちら。
③Recotte Stadio
先述の株式会社AHSが発売しているソフトです。実物を触ったことがないので、情報を集めるだけになってしまいますが……。
MMDモデルが読み込めるので、3Dの動画は作りやすいみたいですね。同社が販売しているVOICEROIDとの連携が強いです。
しかし、まだ発売されて日が浅いソフト。シェアもそこまで高くないので、集合知も少ない。製品の質もまだまだ未知数です。
お金を払ってまで、あえてこのソフトから始めなくてもよさそうです。
公式サイトはこちら。
④Adobe Premiere
Adobe Premiereは、職業としての動画編集にも使われるほどのソフトです。非常に高機能。やれることもたくさんあります。
その代わり、やれることが多いと、初心者には使いづらいです。「説明書を読んでも専門用語だらけで、なにを言っているのかわからない!」となってしまうかも?
もっとも、使っている人が多い分だけ、解説サイトや動画も充実しています。自分から勉強して学べるのなら、将来性はもっとも高い編集ソフトと言えます。
……まあ、お値段もすごいんですけどね。
公式サイトはこちら。
⑤PowerDirector
おすすめの動画編集ソフトで検索すると、だいたいのサイトがこの編集ソフトをトップに持ってきています。いやー、みんながおすすめしているなら、安心ですね! ところで、開発元のCyberLinkは同製品を含むアフィリエイトプログラムを募集しています。はて?
冗談はさておき、編集ソフトとしてはコストパフォーマンスに優れています。お値段もそれなりで、それなり以上の高機能。マニュアルや公式サポートも手厚いです。
1年契約のサブスクリプション版や、30日以内なら返金できる買い切りのダウンロード版、お試しできる無料版もあるので、初めての方には比較的優しいですね。パッケージ版もありますが、頻繁にバージョンがアップグレードされますので、購入方法についてはよく検討してください。
デメリットは、たとえ有料版であっても頻繁に広告が出ることです。OFFにする設定を見逃しているだけかもしれませんが、人に不快感を与えるレベルで広告を出すのはいかがなものでしょう。1万円以上出したのになあ……。
ちなみに、Aviutlに慣れていた私は、まったく使いこなすことができずに、本棚の奥へと封印したのでした。パッケージ版を買ったのもミスチョイス。
公式サイトはこちら。
⑥Filmora
PowerDirectorの対抗馬になる編集ソフトがこちら。どちらかというと、初心者から中級者向けのソフトウェアになります。お値段も少しお安め。
機能は比較的少なめですが、操作性はかなり良いです。最近はシェアも上がっているので、解説サイトや動画もそれなりにあります。
本格的な編集をする頃には物足りないかもしれませんが、最初に触れる分には選択肢のひとつになるでしょう。無料版と有料版の違いも、ウォーターマーク*2が入っているか否かの違いだけなので、まずはお試しで使ってみるのをおすすめします。
公式サイトはこちら。
⑦DaVinci Resolve
オーストラリアの会社が運営している、実質的に無料で使える編集ソフトです。少なくとも、今から始める方は有料版を買う必要は全くありません。広告やウォーターマークなども一切なし。すごい。
機能としてはプロ向きになりますが、UIはやや特殊です。最初に触れるには少し難しいかと思います。逆に言えば、「これが無料で使えていいのか!?」となるくらい、充実した内容ですから、使いこなせれば非常に心強いですね。
デメリットは、ダウンロードに個人情報を入れなければならない点。住所までは入れなくていいのですが、名前や電話番号を入れるのにはやや抵抗があります。もっとも、入れたからなにがあるということもないですし、おそらくデタラメでも許されるのでしょうが……。
公式サイトはこちら。
おまけ
音声合成ソフトのほとんどがWindowsにのみ対応しているので、Macについては触れませんでした。
ただ、動画編集ソフトの性能としては、Mac純正のiMovieもそこそこ使えますので、Apple製品をお使いの人は試してみてください。
また、iPadでは、CapCutやLumaFusionもおすすめです。これらについては、またいずれ別の機会に。
まとめ
Aviutl→手間がかかるけど、音声合成ソフトの動画編集に特化できる
YMM4→Aviutlより機能性で劣るが、簡単で始めやすいし、音声合成ソフトと連動可
Reccotte Stadio→あえて買う必要性がない
Adobe Premiere→高くて難易度が高いので、動画編集に慣れてから
PowerDirector→コスパは良いけどデメリットも少々、特に広告
Filmora→無料版からしっかり試せて、使い勝手も良いミドルクラス
DaVinci Resolve→やや難しいが、無料とは思えないクオリティ
ということで、もう一度結論を述べます。
音声合成ソフトを使った動画編集をするなら、まずはYMM4から。YMM4でできる編集に物足りなくなったら、Aviutlを導入しましょう。
音声合成ソフトにこだわらないのであれば、FilmoraやDaVinci Resolveを触ってみて、編集ソフトに慣れてみましょう。そこから、もしも仕事にしたいと思うことがあれば、Adobe Premiere Proを購入するのがおすすめです。
初めて動画編集をするのであれば、とにかく入り口を楽にすること、続けるのが苦にならないことが重要です。そうして、動画編集をしてからしばらく経って、自分に向いていないと思えば諦めてもいいのです。初めから苦労をしたり、大金を出したりする必要はありません。
それでは、あなたに合った編集ソフトで、良い動画制作ライフを!
もうふたつおまけ。
ひとつは、動画編集ソフトを使ったり、ゲーム実況動画を作ったりするうえで役に立つサイトをご紹介。こちらから。
もうひとつは、使う音声合成ソフトの選び方について。
無料で使えるものから慣れたほうが良いのはこちらも同じで、まずはAquesTalkかVOICEVOXから始めましょう。
もし有料の音声合成ソフトに手を出すなら、VOICEROID+の東北きりたんか、VOICEROID2の琴葉茜・葵がおすすめ。前者は無調整でも自然な発声をしてくれます。後者もきりたんに次ぐ使いやすさで、しかもキャラクター2人分がついてくると思えばかなりお得です。
最近は新しくA.I.VOICEというのも出ました。VOICEROID2の後継にあたるソフトウェアで、より使いやすく、より自然になっているとか。その通りなら、A.I.VOICEの琴葉茜・葵を買うのもありかもしれません。ただ、VOICEROIDシリーズとA.I.VOICEではエディターの互換性がないので、一緒に喋らせるのには不便ですし、A.I.VOICEに登場していないキャラクターがたくさんいるのもあるので、このあたりは好みになるのかなと。